通訳コラム

通訳者への道 連載第4回

技術の習熟

前回では、通訳の仕事を始めたころにやる仕事の例として、リエーゾン通訳、派遣通訳、企業内通訳の3つをあげました。これらは形態から見た分類ですが、内容的にはビジネス関係が圧倒的に多いでしょう。ビジネスの知識やある程度の経験を持っていることが有利なのはこのためです。こうした仕事をしているうち、さらに通訳技術を身につけ、また外国語の力を磨くことによって、だんだん通訳者の道を昇ってゆくことになります。

それでは、どの時点からプロといえるのでしょうか。その境界線は必ずしもはっきりしません。通訳の仕事を始めた最初の頃は、長期的な派遣の仕事や社内通訳者として企業に雇用されない限り、この仕事だけで十分な収入を得るのは難しいかもしれません。通訳の仕事は知的な刺激も多く、身分的にも自由ですばらしい職業だと思いますが、それだけに経済的安定を得ることは容易ではありません。プロの仕事の難しさはここにあります。その時期には、翻訳、教師の仕事などで収入を補っている例をよく見ます。それも通訳の仕事につながりますから、いい方法だと思います。大切なのは、目標を見失わず「腕を磨く」努力を惜しまないことです。具体的には、なんと言っても英語など外国語の力です。通訳技術もありますが、ほとんどの人にとって問題なのは英語力の不足です。あらゆる機会を捉えて、英語力を伸ばすよう努力をしてください。しかし実際に英語を使う機会というのは意外に少ないものです。私が英語を読むことを勧めるのはこの理由からです。英語を話す機会は少なくても、読むことを通じて英語に常に接していれば、言葉の力は少しずつ伸びてゆきます。こうして言葉の力と必要な知識が増えてゆけば、後は仕事を通して通訳技術を高めてゆくことも可能です。

仕事の実績もある程度でき、顧客やエージェンシーにも知られてくるとだんだん仕事の量が増えてきます。こうして安定した仕事量と収入が得られるようになった時が、プロといえる時点ではないでしょうか。通訳の技術は何よりも仕事を通して進歩します。キャリアの浅い時期は、仕事の選り好みをしないでどんな仕事でも進んでやるべきです。通訳者は、政治や経済、ビジネス、IT、医学など、どんな分野の仕事でもこなすのが原則です。誰にでも得意、不得意な分野はあります。自分はこの分野が得意だ、このテーマならいい仕事ができる、という分野はあったほうがいいでしょう。それはその人の強みになります。しかし、なるべく苦手な分野を作らないで、何でもやるようにするべきです。通訳者は原則としてはオールラウンド・プレーヤーであるべきです。ある分野に限られてしまうと通訳技術も伸びません。

通訳業務の特徴は、変化に富んでいるということです。今日は金融関係、明日はIT、その次は環境問題など、多種多様なテーマに取り組むことになります。今日の仕事が終わったら、すぐ明日の仕事の準備に取りかからなければなりません。この準備の手間と時間を惜しんではいけません。通訳者として成功する大きな要因は、いかに事前の勉強を良心的に、かつ効率良くこなすことができるかどうかです。語学力を高め、通訳技術を身につけて充実した通訳者の道を進まれることを希望します。

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通訳者への道

プロの通訳者への道のり、そのポイントを通訳者の小松達也が教示します。