通訳コラム

通訳と声 連載第1回 2005.08.29

リラクゼーションのすすめ

ある年の通訳者のためのアナウンス講座での出来事。何度発声練習をしても、参加者の声があまりに小さい。そこでためしに前屈してもらったところ、床に指先が届いたのは20人中3人だけでした。改めて参加者の体を見ると、年齢、キャリアに関係なく、全員背中と首がガチガチに固まっているという共通点が。狭いブースで座り続け、厳しい本番を重ねていくうちにできあがった通訳者特有の身体でした。そこで15分程、立ったままの状態で腰から体を折り、ダラっと上半身の力を抜くように前屈してもらったところ、その後の発声練習では全体のボリュームが2割増しに。また急に声のとおりが良くなった方が2名ほどいました。

大人になると脱力するのがヘタになります。筋肉が緊張したまま寝てしまうと、そのまま固まってしまうので、夜の過ごし方が勝負です。私は本番後は必ず夜入浴し、ヨガなどの軽い運動をして、リラクゼーションしてから寝るようにしています。体を固めたままの状態で現場に臨むと、プロとしての声はもって2時間。その後は、力で声を出す悪いパフォーマンスに→NGが多くなる→さらに身体を固める、という悪循環に陥るのがわかっているので、結局効率がよい方法なのです。また背中が硬いと頭の回転も悪くなり、末端の血流が悪くなるので風邪もひきやすくなります。私はどんなに忙しくても、お風呂につかりながら資料を読んだり、エイヤッと開脚したまま電話で打ち合わせするなど工夫して、仕事の一環として大真面目に取り組んでいます。

他にも簡単にできるヨガのポーズがあります。ただ仰向けに寝て(ベッドはやわらかすぎるので、床の上)、足と手を広げ大の字に。屍のポーズという名前で、文字通り死体のようにぐったりと力を抜きます。寝る前にすると、一日の緊張が取れていいですよ。一日10分、自分の身体に気を配ることで、長く良いパフォーマンスを続けていきたいですね。

次回は声が出なくなったときの緊急の対処法についてお話します。

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轟 美穂 さん

ラジオ局アナウンサー、TVレポーターを経て、ナレーター、司会者として活躍。プロの通訳者のための日本語パフォーマンス向上講座、放送通訳講座などの講師や、仕事で声を使う人のコンサルティングも務める。2004年より京都在住。ヴォイスコネクション主催。