通訳コラム

通訳と声 連載第3回 2006.05.12

母音の重要性

目の前のクライアントに対し、迅速で正確に訳出するという使命を持つ通訳者の皆さんは、概して早口で、息を吸う間も惜しんで長いセンテンスを一気吐き出す傾向が強いようです。

早口は実は難易度が高いのです。70歳を超えてもなお現役でパワフルに活躍されている黒柳徹子さんは相当な早口ですが、よく聞いてみると発音が明瞭で意味のあるところで間を取っているので、聞き手を疲れさせません。このようなパフォーマンスの第一歩は、母音をきちんと発音することです。声が出にくい時でも、母音さえクリアならマイクが拾ってくれますし、ウイスパリングも、伝わりやすくなりますよ。

練習はひとりでは難しいのですが、自宅でできることをご紹介しましょう。まず口の回りをグルリと取り巻いている口輪筋という筋肉を指で軽くほぐします。次に「ワオワオ」「ウイウイ」とこの筋肉を使って発音してみます。顎はあまり動かさず、あくまでも筋肉を動かすのが目的です。鏡で左右差、上下差がないかチェックしてみましょう。右ききで左側が動かしにくい、ということはありませんか? 固いところはマッサージしてやわらかくします。「口を大きくあけて発音」するのが一見いいようですが、必要以上に大きく開けると次の音に移行する時間がかかってしまいますので「効率よく、やわらかく」使うのがいいのです。ほぐした後は、新聞のヘッドラインなどを母音を意識して読んでみます。最初はゆっくり確実に。最終的に普段のパフォーマンスのスピードまで上げていきます。できたら録音し客観的に聞いてみて、不明瞭な部分をチェックしましょう。次はその部分に焦点をあてて練習します。

表現の世界では、母音は存在感を演出したり、感情や性格まで表現できると言われ、非常に重要視されます。皆さんも母音をきちんと明瞭に発音することで、パフォーマンス向上はもちろん、言葉を大事にしているプロフェッショナルという印象を演出してみてはいかがでしょうか。

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轟 美穂 さん

ラジオ局アナウンサー、TVレポーターを経て、ナレーター、司会者として活躍。プロの通訳者のための日本語パフォーマンス向上講座、放送通訳講座などの講師や、仕事で声を使う人のコンサルティングも務める。2004年より京都在住。ヴォイスコネクション主催。