通訳コラム

通訳と声 連載第6回 2007.12.13

聞き取りやすい表現

放送の世界では、難解なトピックをいかにわかりやすく説明し、面白く楽しい番組にするかに多大な労力が費やされています。司会者の質問に対して専門家が解説、それにお笑いタレントがからんでさらに説明、といった構成にしたり、複雑な説明はVTRで処理する、難しい言葉はテロップをつけて強調するなど、幅広い年齢層の視聴者に理解しやすい工夫がなされています。私がTVレポーターをしていた時は、「やさしい言葉を使って子供でもわかるような説明をしろ」と言われたものですが、これがなかなか難しく、苦労した記憶があります。

通訳の現場でも、「聞いている人が理解しやすくする工夫」はできます。原語があるのですから構成面での大幅な変更はできないのでしょうが、以下のように、訳出する際のことばを「わかりやすく聞き取りやすい」という観点で選ぶことは可能かと思います。

1.漢語を避け、平易なことばで
漢語は格調高く洗練された印象を受けますが、瞬時に理解されやすいのは平易なことばです。
(例) 実施する→行う 事項→ことがら

2.同音異義語
これも1と同じ理由から、耳だけで聞いてまぎらわしく、勘違いされやすいので避けたほうが賢明です。
(例) 会場と開場 審議と真偽

3.カタカナ語の多用
特に英日の場合、原語にひきずられてつい多用してしまいますが、多くすぎると意味不明になってしまいます。
IT業界の会合など、IT用語はカタカタ語の方がわかりやすいという場合もありますので、時と場所により使い分けてください。

4.言い換え
「上手、つまり向かって右側」などの言い換えや補足をすると、聞き手の立場に立った親切な表現になります。

現場では一番ふさわしい訳を瞬時に考えなければならないのでしょうから、大変でしょうが、「通訳音声は読み返しができる紙に書かれた書類とは違う」ことを念頭に入れて、聞き取りやすい表現を心がけてみられてはいかがでしょうか?

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轟 美穂 さん

ラジオ局アナウンサー、TVレポーターを経て、ナレーター、司会者として活躍。プロの通訳者のための日本語パフォーマンス向上講座、放送通訳講座などの講師や、仕事で声を使う人のコンサルティングも務める。2004年より京都在住。ヴォイスコネクション主催。