通訳コラム

通訳者へのキャリア 連載第8回 2016.06.17

議員秘書→会議通訳者

私は国会議員の秘書として働いた後で、サイマル・アカデミーの門を叩きました。

日本の国会議員は、多くの場合、あまりたくさんスタッフを抱えていません。その結果、1人のスタッフがいろいろな役割を果たすことになります。国会事務所の秘書だけをとっても、電話を受けたりコピーを取ったりということから、会合や会議への代理出席、陳情への対応、議員の立法活動のサポートなど、様々です。
私もいろいろな仕事をしましたが、ありがたいことに、時々通訳のようなことをする機会が与えられました。通訳の楽しさと難しさを感じ、ぜひ勉強をしてプロとして通訳をしたいと思うようになりました。

議員秘書の仕事にもやりがいを感じていました。ただ、日常の業務の量(数?)と幅、また仕事の性格もあって、仕事の中でひとつのことを突き詰めてその成果を実感するということが、私には難しかったのでした。そのため、努力と経験を重ねてスキルを高めることに憧れを感じ、それを通訳者という職業に求めた面もあったと思います。

通訳者としての経験はまだ浅いですが、通訳者と議員秘書に求められるものに共通点がたくさんあることを感じています。

例えば、絶えず新しい分野に関わる仕事をさせていただくことから、短時間でリサーチをして問題の全体像をつかむとともに、その分野・業界の言葉を自分の言葉のように使えるように準備すること。話し手の話の「情報」をきちんと捕まえると同時に意図をくみ取ってわかりやすく伝えること。聞き手がどういう方たちなのか理解すること。話し手の手応えや聞き手の反応を推し量ること、等々です。初めてお会いするお客様やスピーカーと、その場で関係を作ることもひとつだと思います。そして、議員秘書は国会職員、通訳者はエージェントのスタッフというそれぞれプロに助けられて仕事に取り組みます。

通訳者は、会合の前後の文脈や参加者間の関係性なども十分に分からない中に飛び込んで仕事をすることもあり、以上のことがますます大事だと実感し、難しさも痛感しています。
一方、仕事や日常生活で得た(一見マニアックだったり些細だったりする)知識が、思わぬ仕事で活きる瞬間が多々あり、前職と共通した驚きと楽しみをもらっています。

私にとって、基本的な通訳スキルという根本的な問題に加え、効果的な準備ができるようになることが当面の課題です。目の前の案件の準備に時間をかけて後の案件に思うように時間をかけられなくなる、予習のツボと違うところに時間をかけてしまう、非効率な予習に時間を費やしてベストのコンディションで本番に臨めなくなるといったことを減らさなくてはなりません。考えてみると、準備の段取りや「精度」は議員秘書時代にも共通して自分の課題でした。
前職時代との「連続性」も踏まえて、努力と経験を重ねて力をつけ、役に立つ通訳者になっていきたいと考えています。

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勝木 一郎 さん

国際基督教大学卒。慶應義塾大学大学院、米国ミネソタ大学大学院を修了後、ワシントンDCで自然保護団体のインターン。国会議員秘書を経てサイマル・アカデミー入学。在学中からサイマル・ビジネスコミュニケーションズを通して社内通訳として勤務した後、サイマル・インターナショナル専属通訳者。