通訳コラム

株式投資の基礎知識 - 金融通訳の入口として 連載第2回 2013.06.21

金融の定義

金融はお金の仲介役

やや乱暴ですが、金融を一言で定義すると、世の中のお金の余っているところから、お金を必要としているところにお金の仲介(橋渡し)をすることと言えると思います。そのために、広く世の中からお金を集め、それを貸付、あるいは有価証券投資のいずれかの方法でお金を必要としているところに供給しています。
例えば、銀行は、預金という金融商品(financial instruments)でお金を集め、個人や企業に貸し付ける、企業の株式を購入する、国や企業の債券を買うというかたちで、お金を供給します。
(ここの理解は、基本的かつ重要です。この点については、私が講師をしております金融セミナーを活用して理解頂ければ幸いです)

エクイティとデット

このコラムのテーマである株式(share あるいは stock)は、企業というお金を必要とする主体がお金を集める手段のひとつですが、お金を集める手段を分類する概念として重要なものにエクイティ(equity)とデット(debt)というものがあります。
エクイティとは、会社の持分(ownership)であり、デットとは、企業への貸付と考えて頂ければ良いと思います。エクイティとして企業に提供したお金について企業は返済義務を負いません。その代わりに、利益が出たら、その全部または一部を持ち主(owner)に還元します。これに対し、デットとして提供されたお金については、企業は元本(principal)返済義務を負うとともに、その間、お金を借りた借り賃としての金利(interest)を払います(家を借りた時の家賃のようなものです)。ここが両者で大きく異なる点です。

この定義に沿えば、企業が資金調達(funding)する方法の内、銀行借入れ(bank loan)や債券(bond)はデットに、株式はエクイティに分類されます。株式はエクイティの代表格であり、株式 = エクイティと理解しても、さして不都合はありません。銀行借入れや債券には、一定期間後に資金を返す義務が企業に生じますが、株式の場合には生じません。

一方、これら3つの資金調達方法を、誰からお金を調達するかという視点で捉えると、銀行借入れはもちろん銀行から、株式や債券は投資家(investors)からという分類ができます。この投資家からお金を集めるために、債券や株式は有価証券(securities)という形態をとっています。有価証券の特徴は、換金する際には売却する方法がとられることです。これに対し、銀行貸出は、原則として売却されません(原則としてとしたのは、銀行貸出も証券化(securitization)という手法によって売却することが可能だからです)。

株主と債券保有者

お金を提供する側(投資家)から見ると、株式というかたちで提供する場合と、債券で提供する場合では、その動機が異なります。債券の場合は、一定期間後に元本が返済(repay または redeem)されますし、その間定期的に金利が支払われますので、安定的な収入の確保と、元本の保全(preservation of principal)が大きな目的になります。一方、株式の場合は、企業の利益が出た時は、利益の分け前に与ることができること、そしてそれ以上に、株式は売却する際に、最初に購入した時の値段よりは売却価格が高くなる(appreciate)可能性があります。そこでの売価益(capital gain)を狙って保有する投資家が多いのです。企業から見れば、お金を集める先(funding sources)を分散(diversify)することで、より多くのお金を集めることができることになります。

また、事業を発展させるに際して、例えば自社の製品の販売網を持っている企業を自らの傘下に入れれば、その販売網を独占的に使える可能性が出て来ます。そうした場合に、その企業の株式を大量に買えば、その会社の経営権を握ることができ、最終的にはその会社を自社に合併(merge)あるいは買収(acquire)することにより、その可能性が現実のものとなります。こうした合併買収(Merger and Acquisition = M&A)目的での保有もあり得ます。

最後に用語解説を加えます。
株式の保有者は shareholder あるいは stock holder 等と呼ばれ、債券保有者は、bondholder と呼ばれます。参考ですが、株式投資は equity investment、債券投資は bond investment あるいは fixed income investment と訳されます。

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戸田 博之 さん

1980年東北大学法学部卒業。住友銀行(現三井住友銀行)国内外勤務、米国での独立業務展開を経て、帰国後は、米系運用会社、外資保険株式会社で金融トレーニングのプロとして活躍の一方、金融商品の選び方や社会保険と金融商品の関係等、独自コンテンツを持つ講師として講演活動を展開。2011年5月に独立。オフィス エイ・エイチ代表。DC(確定拠出年金)プランナー、ファイナンシャル・プランナー。CAISでは、金融英語講座の講師を長年つとめる。
オフィス エイ・エイチ