通訳コラム

株式投資の基礎知識 - 金融通訳の入口として 連載第3回 2013.07.05

株式と債券

有価証券と金融商品の3つの性質

前回、企業が資金調達する方法の分類としてエクイティとデットの区別があるとお伝えしました。また、誰が資金を提供するかという観点での区分として、有価証券(security)という概念があること、その中に株式と債券があることも説明しました。

資金を提供する者にとっては、この有価証券というかたちで提供することにより、いざという時に提供した資金を現金化するために、それを売却するという手段があることになります。この現金化を英語では liquidation と呼び、liquidation ができる性質が備わっていることを「流動性(liquidity)がある」と言います。
この流動性という性質は、「安全性」(safety)と「収益性」(profitability)と共に、金融商品の3つの性質です。安全性とは、(1)元本がどれだけ変動するか、(2)資金の借手が最終的に借りたお金を返す力があるかを示します。また、収益性とは、お金を提供することによって、どの程度、それを増やす可能性があるかを示します。この3つの性質のうち、お金の出し手がどれくらいどの性質を必要とするかによって、株式や債券を含むどの金融商品(financial product または financial instrument)を選択するかが決まってくるのです。

こうして見ると、例えば、預金という金融商品は、流動性や安全性には優れています(すぐに現金化でき、かつ元本の変動が少ない)が、収益性では見劣りします。株式と債券を比べると、流動性においては預金に比べ同程度劣ります。また、安全性においては、預金、債券、株式の順に低下し、反面収益性においては、株式、債券、預金の順に高くなると言えます。
つまり、株式を、金融商品の3つの性質で特徴付ければ、流動性や安全性よりも、収益性に特徴のある資産と言えます。しかし、例えば、やはり収益性が高い資産と言われている不動産に比べると、流動性は高い(容易に換金しやすい)と言えるでしょう。

企業倒産の可能性

投資家が株式というかたちで資金を提供する場合と、債券というかたちで提供する場合の大きな差異がひとつあります。それは、企業が倒産(bankrupt)した場合に、債券保有者は株主に優先して資金を回収する権利を持っているということです。つまり、債券保有者は、倒産した企業の財産の中から、自分が提供した元本と、発生した利息を株主よりも先に取り戻る権利を持っているのです。

一方株主は、債券のみならず、銀行借入れ(bank loans)や買掛金(accounts payable)が返済された後に財産(= 清算価値、liquidation value)が残っていれば、持分に応じてその分け前に与る権利を持っているのです。残っていなければ、何も回収できません。したがって、投下した元本を確実に回収できるかという点に着目すると、預金や債券に比べると劣ることになります。

企業価値が増加する可能性

では、株式というかたちで企業にお金を提供するインセンティブが株主にないのかと言えば、そんなことはありません。株主は、エクイティ・オーナーとして企業の持分を持つ所有者ですから、企業業績が好調で、企業価値(corporate value)が増加すれば(清算価値も増加することになり)、その持分を売却することによって、投下元本を大きく上回る資金を手にすることが可能になるのです。投下元本と売却時に手にする金額の差を値上がり益(capital gain)と言いますが、多くの株主は、この値上がり益に大きなインセンティブを感じて資金提供を行っているわけです。しかも、不動産と比べ、流動性も比較的に高いので、いつでも値上げ利益を手にしやすい点も、株式を保有することの魅力と言えます。

もちろん、逆に企業価値が低下し、もともと投下した元本よりも、売却した際に手にする資金が目減りしている可能性もあります。その際は、売却損(capital loss)が生じることになります。企業価値は、株価(stock price)として数値化され、これが上昇する(appreciate)あるいは下落(depreciate)することで、株式を保有することの収益性は大きく左右されることとなります。
実は、債券に投資しても、この上昇と下落は起こるのですが(但し、企業価値の上下だけが要因ではありません)、その度合いが株式に比べると一般的には低いので、安全性(元本の変動性)は高いのですが、それと反対に収益性は一般に低くなっています。この元本の変動する性質を、金融用語ではリスク(risk)と呼び、リスクの高い金融商品ほど、一般には資金を提供することにより見返り(return)が高くなっています。株式投資家は、ハイリスク・ハイリターン型の投資家と言われる所以です。

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戸田 博之 さん

1980年東北大学法学部卒業。住友銀行(現三井住友銀行)国内外勤務、米国での独立業務展開を経て、帰国後は、米系運用会社、外資保険株式会社で金融トレーニングのプロとして活躍の一方、金融商品の選び方や社会保険と金融商品の関係等、独自コンテンツを持つ講師として講演活動を展開。2011年5月に独立。オフィス エイ・エイチ代表。DC(確定拠出年金)プランナー、ファイナンシャル・プランナー。CAISでは、金融英語講座の講師を長年つとめる。
オフィス エイ・エイチ