通訳コラム

英語発音上達のコツ 連載第1回 2013.05.24

通訳者と発音(1) - 発音が下手な人なんていない?

CAISで「英語発音」の講座を初めて担当させていただいたのが2006年。数多くの通訳者、通訳志望者の方との出会いがありました。これから、このページで「通訳者と英語発音」という観点から連載していきます。この記事が皆様の学習のお役に立ちましたら、幸いです。

ところで、受講生の皆さんの多くから聞かれる声が、「英語発音が下手なので」とか「英語発音がうまくできないので」というものです。
一般的に言えば、発音は「うまい」「下手」といった尺度でとらえられるのだと思いますが、私が専門としている英語音声学という学問では、発音を「うまい」「下手」とはとらえず、「音を作る場所」(これを調音位置(place of articulation)と言います)や「音の作り方」(これを調音様式(manner of articulation)と言います)が異なっていることによって、「目標とする発音(target pronunciation)」が出せていないのだと解釈します。ですから、発音が下手な人は、理論的にはいないということになります。

しかし、なぜ人は発音が「下手」だと感じるのでしょうか。それは、話者が目標とする発音ではない音を出しているからなのです。目標とする発音が出せているか否かということは感覚的なものであるため、専門的な知識がなくても、聞き手は容易に判断できてしまうのです。ここが発音の厄介な点と言えましょう。
しかし、通訳者は語学のプロフェッショナルですから、通訳者にとって英語発音が重要であることは言うまでもありません。なぜなら、発音が間違っていると、正確に意味が通じなかったり、話している内容を理解する際に聞き手が負担を感じたりするためです。

したがって、プロフェッショナルが目指す英語発音とは、「正確な発音(correct pronunciation)」となります。ですから、できるだけ正しく発音するように、日々意識することが大切になってきましょう。

ところで、発音と言っても、母音、子音といった個々の音に注目されることが多く、英語発音の講座でお目にかかる受講生の方も、「“l”と“r”の発音が苦手で」とか「“th”の発音が“z”になってしまうんです」とかとおっしゃるのですが、発音はそうした個々の発音だけでなく、語のストレス強勢のこと、一般的にはアクセントと言われる)、イントネーションリズムなども関係しています。

たとえば、英語話者(母国語として英語を話す人、第2言語として英語を話す人、外国語として英語を話す人)にとって、語のストレスは意味を決定づける重要な役割を果たしています。これが間違ってしまうと別の意味にとられる可能性があります。
例をあげると、“I scream.”と“ice cream”は基本的に同じ音の組み合わせでできていますが、前者では通常、“scréam”の“e”にストレスがおかれますが、後者では“íce”の“i”にストレスがおかれます。もちろん、この場合、文脈で判断されるために大きな問題にならないわけですが、だからと言って、語学のプロフェッショナルである通訳者がストレスの位置をおろそかにしてはいけないわけです。

こうしたことを気にかけながら、発音をしていくことが通訳のパフォーマンスの質を向上させてくれるのです。

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米山 明日香  さん

青山学院大学社会情報学部准教授。ロンドン大学(University College London)で MA in Phonetics 取得。博士(文学)。専門は音声学、英語教育、英語プレゼンテーション。International Phonetic Association Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 取得。「スーパー・アンカー英和辞典」「スーパー・アンカー和英辞典」(学習研究社)の編集・執筆協力者。共著に「イギリス英語を聞く」「話せる! 英語シャドーイング」(コスモピア)、単著に「成功する英語プレゼン」(コスモピア)がある。
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