通訳コラム

英語発音上達のコツ 連載第2回 2013.06.21

通訳者と発音(2) - 明確な発話の重要性

前回は、(1)「正確に発音する」重要性について、(2)発音は個々の音だけではないということについて述べました。今回は、「明確な発話(clear utterance)」の重要性についてお話します。

CAISで英語発音を教えるようになって、気づいたことがあります。それは受講生の発音上の問題は、発音だけの問題ではなく、発話にも問題があることがあるのです。どういうことかと言いますと、英語発音をする際に、個人特有のがあることがあります。
たとえば、
(1)つづり字上、“r”がないのに、どこかしこに“r”を入れて発音する(たとえば、pendulum という発音をした際に、perndulerm のように発音する)
(2)(日本語のときはそうではないのに)英語で発話する際に、鼻声で発音する
などです。

こうした癖は、英語発音をうまく発音しようと思うばかりに、不要な発音をしてしまうことによるのです。これは、日本人英語学習者にしばしばみられる悪い癖なのですが、それが悪い癖であると、英語学習者本人も、指導者も、意識していないことが往々にしてあるのです。
では、なぜ意識していないかというと、こうした癖が、俗な言い方になりますが「英語っぽい発音」であるという誤った認識を持っている学習者が多いため、指導者の多くも指摘や注意をしないようですし、学習者本人も「英語っぽい発音」だと思って発音しているため、そうした発音上の特徴を悪い癖だととらえていないのです。

では、なぜこれらの癖が悪いのかと言いますと、理由は2つあります。
まず、この癖がいったん身に付いてしまうと矯正するのが大変難しく、矯正する場合には、長い時間を要するからなのです。したがって、悪い癖をできるだけ身に着けないように、普段から心がける必要があります。
次に、これらの特徴は聞き手にとっては、大変聞きにくいのです。それは、“r”の音が過度に強すぎたり、また鼻声で発音してしまったりすることから、本来の音がこうした特徴によってマスキング(masking)されて、明確に伝わらないという弊害を招きます。

外国語を話す場合において、話し手が意図した音が聞き手に伝わらないということは、意図した意味も当然伝わらないのです。言うなれば、話し言葉の場合、音があって意味があるのです。具体的にいえば、通訳者にとって、通訳したものが聞き手に正確に伝わらなければ、どんなに正確な通訳をしたとしても、それは結果として良い通訳とは呼べないのではないかと思います。

ところで、通訳者はマイクを通して通訳する場面も多いものですが、マイク自体がそもそもマスキングの役割を果たしています。つまり、先ほど述べたような特徴があるまま、英語でのアウトプットをした(通訳した)場合、マイクを通すと、その特徴と相まって、さらにぼやけた音を発する結果につながってしまいます。ですから、正確に発音することこそが聞き手にとって「聞きやすい発音」となるわけです。

これらの悪癖が自分にはついていないかを確認して、通訳(パフォーマンス)する必要があるのではないでしょうか。

通訳情報ステーションページの先頭へ戻る
米山 明日香  さん

青山学院大学社会情報学部准教授。ロンドン大学(University College London)で MA in Phonetics 取得。博士(文学)。専門は音声学、英語教育、英語プレゼンテーション。International Phonetic Association Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 取得。「スーパー・アンカー英和辞典」「スーパー・アンカー和英辞典」(学習研究社)の編集・執筆協力者。共著に「イギリス英語を聞く」「話せる! 英語シャドーイング」(コスモピア)、単著に「成功する英語プレゼン」(コスモピア)がある。
Dr.明日香の英語発音ブログ