通訳コラム

Around the World 連載第5回 2016.01.22

シンガポール「シンガポール通訳事情」

2015年8月9日、シンガポールは建国50周年行事で賑わった。在住27年、通訳者としてのキャリアの殆どを当地で過ごしてきたが、変化を少し振り返ってみたい。

シンガポール英語。公式言語としては英・中・マレー・タミール語を使用するこの国だが実質的な共通語は英語(とシングリッシュ)。
駆け出しの頃、在日シンガポール大使館の行事の通訳をする機会があった。当時の経済開発庁長官以下シンガポール人の官僚が、公式行事が終わって内輪だけになると、見事にシングリッシュでの会話に切り替わっているのを見て感心したものだが、今や私も立派な(?)シングリッシュの使い手に。ただ当然ながら色々な国籍の参加者が集う場の通訳ではstandard Englishを心がけている。

仕事の量と質
確実に増えた。 日本との関係が密なおかげで、通訳の仕事に事欠くことはなく、企業、経済団体、業界団体の定期的な会合、アセアン関係の会合等安定した需要があったが、最近多いのが日本企業の投資家訪問(IR)、また労働組合の国際組織の会議通訳等である。国内だけでなく、アセアン各国、香港、インド出張案件なども増えている。
通訳者の数
需要の伸びに比して通訳者の供給は追いついていないと思われる。裾野は広いと思うのだが、訓練を受ける機会がアジアには無いので、要求されるレベルの技量を備えた日英の通訳者はアジア全体として不足している。
リレー通訳の機会
アジア各地で開催される同時通訳の会議で、日中韓の3カ国語以外にアジア言語のブースが入る場合も多くなった。ベトナム語、タイ語、インドネシア語、ミャンマー語など。英語をキーにしてリレー通訳を行う場合の通訳機材の操作に慣れていない通訳者も多く、押すボタンを間違えて訳が出てこなかったり、チャンネルが 混線したりというトラブルも。モニターしているはずの機材会社の担当者も、現地の方々はのんびりしている場合が多いので、我々がブースから飛び出て注意を喚起する事もしばしばある。
今後の展望
アセアン経済共同体のスタートを控え、日本企業の事業活動もアセアン全域で更に活発化し、アセアンの実質共通語としての英語の通訳需要はこれから更に伸びるだろう。インド等も含めれば巨大な市場が広がっている。

日本である程度通訳経験を積んだ皆さんには、是非新たな活躍の場としてアジアで腕を磨くことを考えてほしいと思う今日この頃である。

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砂場 裕理 さん

大学在学中に会議通訳訓練コースを受講したのがきっかけで、プロの日英通訳者の道に。日本で6年間通訳の経験を積み、1988年来星。シンガポール人の夫と娘、息子、犬と暮らしながら、アジア各国での会議に飛び回る毎日。