通訳コラム

通訳者の英語力 連載第6回 2017.08.04

アウトプットの機会を設ける

これまでは主にインプットについて書いてきました。日本人の英語力は、読み書きはできても聞いたり話すことが苦手であるとか、聞いたり読んだりする受信はできても、話したり書いたりする発信は苦手であるなど、様々なことが言われますが、実際はどの技能も熟練度が低く、十分なインプットをしないままアウトプットを試みて、フラストレーションを抱えている人がたくさんいるように感じます。

とはいうものの、ある程度のアウトプットをすることで、インプットの効果も高まるのではないかと考えています。

例えば専門的な内容の案件をなんとかこなしたあと、関連する新聞記事を読んだりすると、いつもより注意深く読んでいることに気づきます。「うまく言葉が出てこない」というフラストレーションを経験することで、役に立ちそうな語彙や表現に対する感度がよくなるわけです。

また、現場でクライアントや先輩に教えていただいた表現は、自分が恥をかいたということもあり、強烈に印象に残り、すぐに自分でも能動的に使えるようになります。喜んで恥をかきたい人はいないと思いますが、恥ずかしい思いやフラストレーションはインプットの効果を飛躍的に高めます。インプットが8だとすれば、アウトプットは2くらいの割合で行うのがいいのではないかと思います。

通訳学校に通っていれば、教室がそのままアウトプットの場となりますが、それ以外にも、多少緊張する場でのアウトプットの機会を設けたほうがいいでしょう。通訳でもビジネスでも、研究の場でも、負荷がかかった状態である程度のパフォーマンスを出せるということが重要です。外国人の友人とは楽しく流暢におしゃべりができるけれども、仕事で使うとなると緊張して舌がもつれてしまう、というのでは使い物にならないからです。もちろん緊張は誰でもするし、きちんとしたパフォーマンスをしたいという気持ちの表れでもあるので、悪いことではありません。

ディベートやパブリックスピーキングの活動などに参加することによって、自分に負荷をかけた状態でアウトプットの練習をすることができます。最近ではインターネットでいろいろな集まりを見つけることができるので、通いやすいものがないか探してみてはいかがでしょうか。ちなみに私もパブリックスピーキングの活動に参加しています。

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佐藤 祐大 さん

ロンドンメトロポリタン大学大学院会議通訳科修了。医療機器メーカー、コンサルティング会社などの社内通訳者を経て、2016年10月からサイマル・インターナショナル専属通訳者。