通訳コラム

通訳者の英語力 連載第7回 2017.09.08

通訳の基礎訓練をする

ヨーロッパの通訳訓練では、「通訳とは聞こえてきたものをそのまま繰り返すことではないので、シャドーウィングは百害あって一利なし」と考え、シャドーウィングを決してやらせないという養成機関もあります。ただし、日本の英語学習や通訳訓練においては広く取り入れられています。同時通訳の場合は、聴きながら話すという、通常では行わないことをやるので、まずそれに慣れるためにシャドーウィングは効果的だと考えられているようです。また、英語のイントネーションやリズムなどに慣れるのにも役立ちます。

ディクテーションというのは、聞こえてきた英語を一字一句書き取っていくことです。前置詞や冠詞などは非常に弱く発音されるため、音として聞き取るのは困難です。私もかつてはそのような音を聞き取るまで訓練しなければいけないと思っていましたが、実際は文法知識を動員して、音として聞こえない部分は推測していくほうが効果的であると気づきました。会議通訳の修士論文を書くために、英語で行われたパネルディスカッションをディクテーションしましたが、非常にいい訓練になったと思います。そのパネルには英語が母語でないスピーカーも含まれていたので、部分的には苦労しましたが、ネイティブの友人にも助けてもらいながら聞き取りました。

サイトトランスレーション(サイトラ)については、通訳でも実際に必要となる技術です。私もまだまだ苦手です。目は耳よりも欲張りだと言われます。耳であれば余裕がなくなってくると重複している情報や必要のない代名詞、レトリックとして使われているだけの形容詞(英語は同じ意味の形容詞を羅列する傾向があります)などは自然に省いて通訳できるのに対して、手元に原稿があると、ついつい目に入るものを全て訳したくなってしまいます。

事前に原稿が出た場合には、ベタ訳を用意することもできます。しかし、スピーカーが聞きやすいように口語的な表現にアレンジしながら読んだり、時間の関係などで飛ばし読みをしたりされると、どこを読んでいるのか分からなくなってしまうこともあるので、注意が必要です。まだまだ試行錯誤の毎日です。

現代はインターネットのおかげで、色々なスピーチの原稿を手に入れることができます。また動画もほとんどのものが視聴可能なので、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式でのスピーチや、オバマ大統領の広島でのスピーチなどを使って、サイトラの練習をすることができます。

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佐藤 祐大 さん

ロンドンメトロポリタン大学大学院会議通訳科修了。医療機器メーカー、コンサルティング会社などの社内通訳者を経て、2016年10月からサイマル・インターナショナル専属通訳者。