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業界研究セミナー「放送通訳の世界を知る」

実施概要

日程

12月3日(日) 10:00-12:30

対象

  • 放送通訳者を目指して勉強している方
  • 放送通訳業界の"今"を知りたい方

内容

会議通訳やビジネス通訳とは違う放送通訳ならではの通訳の世界を放送通訳の第一人者である、石黒弓美子さんから伺います。

  • 放送通訳の勉強法、通訳法
  • 一日のスケジュール
  • どんな苦労・やりがいがあるか
  • これからの需要 etc.

など、実体験を基にお話いただきます。

過去の参加者アンケートもご覧ください。

講師

石黒 弓美子 講師

会議通訳者。放送通訳者としては、NHKBS試験放送開始の時からたずさわる。(株)NHK情報ネットワーク国際研修室講師として後進の指導にも熱心に取り組む。共著に「放送通訳の世界―衛星放送のニュース番組を支える立役者」(アルク出版)など。

定員

45名

会場

サイマル・アカデミー 虎ノ門校 地図
(東京都港区虎ノ門3-10-11 虎ノ門PFビル1F)

言葉への感受性を強く持つことが大切

ニュースを聞いて時差通訳にチャレンジ

講師の石黒弓美子さん

レポートをお送りいただいたCAISメンバーの緒車奈穂子さん

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参加レポート

石黒弓美子先生の講演会はまず、朝のABCニュースをほぼ生同通で流すという、11月から始まったNHKの新しい試みをめぐるお話から始まりました。いくら生同通とはいえ、放送の使命である「一度聞いてわかる」を損ねないため、いかに「情報を削らず言葉を削り」、「早くしゃべっているのに早口に聞こえない」ようにするか。それには文章構造の工夫や音声表現の訓練がいかに重要か、とお話は続きました。

さらに放送通訳の歴史や舞台裏、NHKならではの言葉の苦労(バービー人形のニュースなのにバービー人形と言ってはいけない)など、臨場感とユーモアたっぷりの説明を楽しんでいると、いきなり「では皆さんも実際にちょっとやってみましょう」。突如緊張感が走る教室に向かって「やってみなければ何が出来て何が出来ないかわかりません。何ができないかわかれば、どう補強したらよいかわかりますね」と先生はにっこり。

教材は冒頭で話題になったABCニュースです。日本時間の朝8:30からアメリカで放送されるものを、朝8:40から、つまりほぼリアルタイムで放送するので、10分間のタイムラグがあるとはいえ、通訳者が事前に聞けるのはせいぜい1回とのこと。私たちもまず1回聞き、その間に必死でメモ取りをしました。

ロンドンで怪死した例のロシアの元スパイのニュースです。次にそのメモを頼りに、もちろん耳も頼りに(したつもりで)、同時通訳(らしきこと)を必死でやってみました。やってみると本当に、いかに言葉が出てこないかよくわかりました。出来ない原因として石黒先生は、スピードと集中力を強調なさいました。集中力の果たす役割は意外に大きいということ、そして考える時間のない同通ではクイックレスポンスが必要で、それには physical exercise が必要だと。ピアノの演奏と同じで、こう弾けばよいとわかっているだけではダメ。実際に弾けるのは練習の賜物でしょうというご指摘には素直に納得。

このあと、何と実際に放送されたご自分のパフォーマンスを聞かせてくださいました。しかも、8:40のほぼ生同通の後、9:40から今度はもっと時間をかけて練った訳で同じニュースが放送されるのですが、この両方の訳を流して、1回目と2回目の違いまで聞かせてくださったのです。

このあとお話は、日本における通訳の歴史、放送通訳のあり方など多岐にわたったのですが、特に印象に残ったことを2点だけ記したいと思います。

ひとつは通訳の持つべき「言葉の感覚」について。石黒先生は、現在の日本語の乱れの責任の一端は通訳者にある、とまでおっしゃいます。「遺体を収容」と言うべきところ、「死体を回収」と言う。戦場の描写なのに黒い煙が「たなびく」と言う。機械でもないものに「制御できない」と使う、などの例を次々と挙げ、これをおかしいと思わない人はもっと感覚を鋭く持ちましょう、と珍しく強い口調でおっしゃいました。また質疑応答で、日本語を磨く方法を尋ねられた際のお答えは、先輩・同僚のいい日本語を盗む、本をたくさん読む、漢文・古文の勉強、の3点でした。

もうひとつは、通訳者に大切なものとして知識と共に挙げられた、presentableな発音についてです。日本には発音矯正の場が少ないことを指摘されたうえで、なぜ正しい発音(とイントネーション)ができないかを具体的な例で説明してくださいました。ちなみに石黒先生は東海大学でこれに関する講義を持っていらっしゃるそうです。

終始笑みを絶やさず次々と鋭い指摘をなさる石黒先生との2時間半はあっという間でした。私は時々BS放送で英語ニュースを見ますが、石黒先生の通訳のわかりやすさには驚嘆していました。今日のお話を伺って、その秘密が少しわかった気がします。盛りだくさんの内容で、とてもすべてはご報告できませんが、通訳を志す方はもちろん、言葉に関心をお持ちの方も、機会があれば是非一度お話を伺ってみることをお勧めします。

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