通訳コラム

通訳者の英語力 連載第5回 2017.07.07

洋画を活用する

英語学習として人気があるものに、洋画を活用するというものがあります。私はあまり映画を観ませんが、ときどき英語字幕をつけて観たり、一度観たことのある映画を字幕なしで観たり(初見の映画をいきなり字幕なしで観ても、映画の内容によっては聞き取れずにショックを受けます)、映画と原作のペーパーバックを組み合わせて観たりしています。

意外に効果的なのは、邦画を英語字幕で観ることです。邦画であれば、日本語は耳で聞いてすぐにわかります。字幕は字数が限られているので、短くまとめられており、簡潔な表現を学ぶことができます。

たとえば「お邪魔しました」や「つまらないものですが」のような表現は、そのままことばを訳しても意味は通じません。“I bothered you…”や“This is a boring thing…”などと言っては怪訝な顔をされてしまいます。日本人が「ひとつよろしく」のつもりで「ワン・プリーズ」と言ったというジョークは有名ですね。英語字幕をみると、「お邪魔しました」は“Thank you for having me”、「つまらないものですが」は“I have a little something for you”といった訳になっています。

病気の名前や化学物質などの専門用語は比較的ことばをそのまま置き換えても大丈夫な場合が多いのですが、こういった日常や合間のちょっとした一言ほど、発想の転換が必要です。ことばではなく、「こういう場面で英語ネイティブだったら何と言うだろうか」と考えて、機能を訳さなければいけないので、帰国子女ではない私などはどうしてもハンデがあります。もちろん、通訳の場合は字幕翻訳とは違うので、あまりにもクリエイティブに訳しすぎると「そんなことは言っていない」とクレームがついてしまう場合もあると思いますが…。

洋画は英語圏の文化を学ぶのにも役立ちますが、実は私は英語圏の文化そのものよりも、グローバルに英語が使われている現象に興味を持っています。ネイティブの英語から学ぶこともたくさんありますが、いろいろな国籍の人たちが集まって、ガヤガヤと色々な英語でコミュニケーションをとっている様子を見るとわくわくしてきます。もちろんインド英語やシンガポール英語には苦労させられていますが、細かい間違いにとらわれず英語を自分たちのものとして使っている様子を見るとすがすがしく思います。通訳の現場でも「今日はネイティブの英語しか訳さなかったな」という日は月に数日しかありません。

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佐藤 祐大 さん

ロンドンメトロポリタン大学大学院会議通訳科修了。医療機器メーカー、コンサルティング会社などの社内通訳者を経て、2016年10月からサイマル・インターナショナル専属通訳者。